「世界で活躍する日本人」と聞いて、皆さんは誰を思い浮かべますか?
私にとってその一人が、中島聡さんです。
マイクロソフトでWindows 95の開発に携わり、「ドラッグ&ドロップ」や「ダブルクリック」を設計した、日本人プログラマー。
現在は起業家、投資家としても活躍されています。
私はそんな中島さんのメルマガ(月額880円)を定期購読しており、毎週火曜の配信を楽しみにしています。
メルマガで自動運転に関する興味深いコメントがあり、「出典を明確にする限り、ブログ等への引用OK」とのことで本ブログでご紹介しようと思ったのですが・・・その前に今日は中島聡さんについて少しだけ紹介させて下さい。
きっかけは、一冊の本との出会い
私が中島さんを初めて知ったのは、2017年頃に手に取った一冊の本がきっかけでした。
『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』
20代~30代にかけては、仕事論・時間術に関する本は沢山読んできました。
その大半はブックオフで売るなどで手放していますが、この本は2017年頃に手に取ってから、折に触れては読み返し、「殿堂入り」して未だに私の本棚に収まっています。
特に海外駐在中に部下を持ち、プロジェクトマネジメントを担うようになってから、よく読み返していました。
「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」の魅力
高校2年生の時に親から買ってもらったパソコンに熱中し、プログラミングの世界に没頭していく青年時代。
プログラマーとして頭角を表し、「ドラッグ&ドロップ」や「ダブルクリック」の発想を形にし、ビル・ゲイツに認められていくマイクロソフト時代。
単なるパソコンオタクだった中島さんが、プログラマー/エンジニアとして活躍の場を日本から世界に広げていくサクセスストーリーは読み応えがあります。
初めて読んだ時にはこんなすごい日本人がいるのか!とワクワクしたものです。
その成功体験や試行錯誤の裏側にある、エンジニアとしての「時間術」を公開したのが本書ですが、商社で働く私の仕事にも当てはまる部分が多く(そもそも仕事の本質は、職種に関係なく共通していると感じます)、今でも意識しています。
「崖を飛び降りながら飛行機を組み立てる」という働き方
私の印象に残っている言葉を一つだけ挙げるなら・・・
「崖を飛び降りながら飛行機を組み立てる」
という言葉です。
当時の中島さんにとって、プログラマーとして何よりも大切だったのは、アイデアを完璧でなくてもいいので、とにかく「形」にすること。
アイデアを形にする前に、「そもそもどういうものなのかイメージできない」とか「予算はあるのか」とか「商品になる保証はあるのか」とか、そういったことを言われて仕事が中断する前に、まずは大雑把でよいので「プロトタイプ」を作って形にしてしまう。
プロトタイプであろうが、とにかく全体像を一度目に見えるor手で触れる形にしてしまえば、それを見せながら関係者を巻き込んでブラッシュアップしたり、納期までに余裕をもってプロジェクトを進めたりと、その後の仕事がより楽に進められる。
結局、仕事が終わらないのは時間の使い方に問題があり、中島さんの中で「納期」は「絶対に守るもの」であり、そのために生み出されたのが「最初の2割の期間で、仕事の8割を終わらせる」ロケットスタート型の時間術。
逆に最悪なのは、小学生の夏休みの宿題と同じで、最後の最後で何とか仕上げようとするラストスパート型。
小学生の宿題ならそれでもOKですが、関係者が多いプログラミングの世界ではこのようなやり方では良いアウトプットはできない。
どんな仕事でも100%完璧というものは存在せず、必ず後でやり直しになる。
ならば、とにかく早い段階で全体像を見える化して、ブラッシュアップしていく、という考え方が、この「崖を飛び降りながら飛行機を組み立てる」という言葉に凝縮されています。
TEDでも語られた時間術
この考え方はTEDの舞台でも語られています。
登壇テーマはずばり、「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」。
この本のエッセンスを、中島さんが自ら14分で語っています。
以下リンクを付けておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=TYItq88nHMI
エッセンスの詰まった1枚のスライド
ちなみに、この14分のプレゼンで中島さんが使ったスライドは、以下のたった1枚のみでした。
このチャートにエッセンスが詰まっていますね。
この図を見ると、投入する労力の総量は同じなんです。
しかし、80%完成するタイミングには雲泥の差があります。
ラストスパート型だと、80%完成時点ではもう時間が残されていないので、そこで根本設計から変えないとダメだと分かっても、もう手遅れです。
一方、ロケットスタート型では80%完成時点で、これは根本から見直した方が良いとなった場合、思い切ってリセットする時間的余裕があります。
これが優れたエンジニアの仕事の進め方の秘訣というわけです。
話は逸れますが、この考え方は色々なことに応用できそうです。
スポーツ、例えばテニスの試合においても、同じエネルギーを投入するならば、ゲーム開始直後の相手がまだ温まっていない段階で全集中でプレーしリードを奪う事で、中盤以降は余裕を持った試合ができ、勝つ可能性を高めることができます。
私の経験でも、強い選手ほど序盤のスタートダッシュを大事にしますね。
繰り返しますが、投入する労力は同じなんです。
中島さんは「(追い詰められると登場する)パニックモンスターが、私の場合は一番最初にくる」と言っています。
勿論パニックになる必要はありませんが、「最初に全集中して、後半は流す」ことで、心地良い働き方が実現します。
商社にも通じる「最初の2割で8割終わらせる」働き方
・納期は「絶対に守るもの」である
・仕事を与えられたら、速攻でプロトタイプや全体像を形にする
・最初の2割の時間で仕事の8割を終わらせる。完成度は後から上げる
言われてみれば当たり前のことですが、これを着実に実行できる人は意外と少なく、逆に出来ている人は会社や業界でも評価の高い人なのではないでしょうか。
私自身、日本では優秀な人材が集まるとされている大手の総合商社で働いており、特に最近入社してくる若手は優秀な人が多いなと感じていますが、それでも会社を見渡すと、「丁寧にやりすぎて遅れる」ケースは決して少なくありません。
例えば企画書、プレゼン資料、社内稟議書といった資料作成において、優秀な人ほど、「質の低いアウトプットを出したくない」という心理(完璧主義)が働き、一定の品質に仕上げてから出す=出した時には納期が迫っていたり、上司のイメージとそもそもの前提でかみ合っておらず、慌てて作り直す、というシーンは結構見かけます。
常にスピード感の求められる商社ですらそうですから、日本ではラストスパート型の仕事の進め方は根強いのだと思います。
アメリカと日本の仕事観の違い
逆に私がアメリカに駐在していた頃、現地のアメリカ人の同僚や部下の多くは、まさに「ロケットスタート型」でした。
仕事を振られたら、とにかく低クオリティでも、まずはアウトプットを返してきます。
今で言えば、ChatGPTに仕事をさせているイメージです。
そのクオリティたるや、時には凄まじく低く、自分であれば上司や顧客の目を気にしてしまい、絶対に出さないレベルですが、当の本人はさして気にする風でもなく、常にそのスピード感で仕事をしています。
日本人が気にするポイントって、誤字脱字やフォーマリティーの部分が大半なんですよね。
逆に、資料がきれいで整っていれば、本質が伴っていなくてもOKだったりします。
他方、上述の「低クオリティ」というのはちょっと語弊があり、誤字脱字や資料の見栄えの話で、実はよく見ると中身・本質はちゃんとおさえられていることが多いです。
米人同士のやり取りを見ていると、速攻で出てきたアウトプットをたたき台に、あーだこーだと活発に議論して、中身を深めていきます。
(アメリカ人は小さい頃からディスカッションに慣れているので、ここは彼らの得意領域)
議論が落ち着いたところで、それを資料に落とし込むかと思いきや、驚く事に彼らは最初の資料をぺろっと手直しする程度で、その仕事を完結させに行きます。
議論し深掘りする事が目的であり、とにかく無駄なことはしないのです。
悲しいかな、そこで登場するのが私のような日本人で、活発な議論の要点を資料に落とし込み、見栄えのよいパワポ資料に仕上げてお客さんに納品します。
日系企業の海外駐在員あるあるですね。
纏めると、これはアメリカに限らず、日本以外のほぼ全ての国でそう感じますが、最初の一歩目のアウトプットがとにかく迅速です。
(私の経験では、特に中国人は最初の一歩目はかなり粗いけど、とにかく迅速です)
この点は、私自身も仕事で意識しています。
まとめ
本日は中島聡さんと、その著書「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」の紹介でした。
今後、中島さんのメルマガの中から興味深い記事は本ブログで引用させて頂いたり、それを土台に考察できればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関連記事です。beikabu-fire.com